昨夜はマレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団の「トリスタンとイゾルデ」の第1幕に続き、第2幕と第3幕を聴き終わった。第1幕を聴いて、「粘着性の薄い」テンポと表現したが、第2幕はさらに速いテンポでさくさくと進む印象なので、重厚でどっしりとした演奏が好みの方には少々物足りないかも知れない。演奏自体は決して悪くはないと思いますので、私には違和感はありませんでした。後半のユン・クワンチュルのマルケ王は、実に深みのある重厚な演奏で、このCDの歌手の中で最も素晴らしいと感じた。いま、ドイツのワーグナーのバスでもっとも存在感のある歌手だと実感します。
第3幕では、テンポはまた緩やかに戻ります。まるで虚無から湧きあがるような繊細なデリカシーで演奏される前奏曲は、絶品です。この幕の前奏曲は、非常に重く深い演奏ですので、静的な印象が今までは強かったのですが、この演奏の冒頭ではかなり大音量の強奏であった事を再認識させられます。この幕でも、ユン・クワンチュルの深いマルケ王が素晴らしい。スティーブン・グールドのトリスタンは、私のイメージするトリスタンよりも深く柔らかい印象。ニーナ・シュテンメのイゾルデも文句なく素晴らしい演奏。クルヴェナール、ブランゲーネも良かったと思います。それにしてもワーグナーというのは、長大な曲の最後の終焉部を実に美しく、感動的に仕上げる天才だったなあと、何度この曲を聴いてもその度に深く感動させられます。
来年の春には、ヤノフスキ氏率いるベルリン放送交響楽団が来日予定ですので、今から楽しみです。早くプログラムが知りたいものです。