2014年9月26日 大阪フェスティバルホール
午後7時開演
指揮 大植英次
演奏 大阪フィルハーモニー交響楽団
(第481回定期演奏会)
曲目 マーラー交響曲第6番「悲劇的」(85年版)
なかなか意欲的なプログラムと指揮者に食指が動いたので、珍しく大フィルの定期コンサートに行ってきました。近住ながら、普段はいざプログラムを見ると、またいつでも聴けるかと言う気分になって、なかなか大フィルのコンサートに実際に足を運ぶ機会が今までありませんでした。今日の演奏はなかなかどうして、大植英次氏の情熱的な指揮のもと、大編成のオケにも関わらず集中力が途切れることなく、この複雑な大曲をしっかりとまとめあげ、大変聴きごたえのある立派なもので、足を運んだ甲斐がありました。マーラーの実演は、最近でいうと去年5月の大野和士ウィーン響の5番、今年2月のシャイー指揮ライプツィッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の7番を聴いて以来。6番というのも実にチャレンジングな大曲なので、実力のあるオケで統率力のある指揮者で聴ける機会はそうしょっちゅうはありません。
この曲で問題にされるのが、スケルツォを第二楽章か第三楽章のいずれに置くか、ということと、最後の「運命のハンマー」の打撃が、二度なのか、三度なのかということ。結果を先に言いますと、今日のプログラムはスケルツォを第二楽章に置くコンヴェンショナルなもので、最後のハンマーの打撃は二度でした。これらはCDによってもまちまちですが、最近シャイーLGOの映像でリリースされた演奏を観ていますと、スケルツォを第三楽章に持って来るのが本来の配置だと言うことを、シャイーと音楽学者がインタビューで語っています。個人的には、アンダンテが緩徐楽章的な情緒を湛えた美しい楽章ですので、今日のように従来型のスケルツォ - アンダンテが、やはりしっくり来るかなあ、と感じました。オケは第一バイオリン - ヴィオラ - チェロ - 第二バイオリンの対向配置で、コントラバス8は右後ろ、ハープ2は左端、ティンパニー2、特製のハンマーと木箱、ホルン9、Tp6という壮大な編成のフル・オーケストラ。大植氏は譜面なしで、時にタクトを手にとり、時にはそれを置いて素手で、実にダイナミックで表情豊かな動作で、身体全身で第6番を表現しまくっています。多彩なリズム感が重要な曲だけあって、やはりこうしたツボを得た大きな動きがこの曲には求められると思います。時には肩を大きく上下させたり、左手を「空手チョップ」のように切ったりして、複雑なリズムを身体全身でまとめ上げている印象でした。
オケの演奏も、出だし低弦の冒頭の部分がほんの少し「おっかなびっくり」な緊張気味に感じて、もう少しのっけから大胆にわし掴むような迫力で、がっつりと来てほしいかな、と思いましたが、それは一瞬でした。すぐに迫力があってまとまりがある、かつ弦の美しさもしっかりと表現され、集中力の途切れることのない充実した演奏に。終演後は大変感動的な長い静寂のあと、指揮者・オケともに最後まで盛大な拍手で、フライング拍手の無粋客がいなかったのは実に幸いでした。この曲はやはり、最低でもこれだけの実力以上のオケでないとなかなか難しいだろうなと、実感しました。お手軽な価格ながら、大変素晴らしい演奏が聴けた一夜、帰宅した頃には、さわやかな夜の空気と甘いキンモクセイの香りが、あたりを包んでいました。