grunerwaldのblog

バイロイト音楽祭やザルツブルク音楽祭など、主に海外の音楽祭の鑑賞記や旅行記、国内外のオペラやクラシック演奏会の鑑賞記やCD、映像の感想など。ワーグナーやR・シュトラウス、ブルックナー、マーラー、ベートーヴェン、モーツァルトなどドイツ音楽をメインに、オペラやオペレッタ、シュランメルン、Jazzやロック、映画、古代史・近現代史などの読書記録、TVドキュメンタリーの感想など。興味があれば、お気軽に過去記事へのコメントも是非お寄せ下さい。

2020年05月

最近になって、ようやく不織布のサージカルマスクやアルコール消毒液(ただしジェルタイプ)が一部のスーパーマーケットやドラッグストアなどの店頭に並べられるようになってきたが、3月から5月の中頃まではほぼ入手困難が続いていた。かろうじて非アルコール系の除菌用ウェットティッシュタイプの製品が手に入ればいいほうだった。手元の製品の表示を見ると、ベンザルコニウムクロリド(塩化ベンザルコニウム)がその主成分のようらしい。最近になって、NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)が新型コロナウィルスに有効な界面活性剤製品名を、そのサイトで公表している(参照①参照②)。


それによると、塩化ベンザルコニウムを成分とする上記のような除菌シート製品や、アルキルアミンオキシドや直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(とうてい一回で覚えられない)などの界面活性剤を主成分として含む家庭用台所洗剤(ママレモンやジョイ、チャーミーマジカなど)は新型コロナウィルスに対して有効であることを認めている一方、最近になってなにかと取り上げられている次亜塩素酸水については有効性が確認されていないことが報じられている(NITE資料ファクトシートは→こちら)。大型ディスカウントスーパーなどの店頭では、一本300㎖程度のそうした製品が千円前後で大量に売られているのを見かけたが、やはりそうした製品は儲け優先の眉唾商品だったことがわかった。一本300円程度のキッチンハイターなどの家庭用漂白剤があれば、キャップ半分程度で1リットル程度の次亜塩素酸ナトリウムベースの消毒液が作れるので、キッチンハイター一本で何十本ぶんも簡単に作れる(花王のサイトでは、保存状態により経時劣化することもあり、消毒効果を期待するには案外不安定であると説明している)。NITEファクトシートでは、空間除菌を謳っている次亜塩素酸水商品を室内で噴霧することも、推奨できないばかりか人体への危険性がある可能性を排除できないとしている。


NITEでは、消費者利益を守ることを主眼に、実際の商品や製品の性能や効能を客観的で科学的な調査方法で試験した結果や情報を公開している。

5月28日付け DIAMOND ONLINE 記事窪田順生、「コロナ収束は日本人のマジメさや清潔さのお陰」という勘違いの恐ろしさ)より。

「まさに日本モデルの力を示したと思います」ー緊急事態宣言解除にあたって首相が会見でまたもや発した空虚な言葉。必要なPCR検査を絞り込みすぎ、発熱しても4日はそのままがまんしろとなって保健所で堰き止められて埒が明かずに、その間に命を落とした人が多数に上っているのに、これらお亡くなりになられた方々は「日本モデルの力を示す」ために犠牲になったと言うのか。この期に及んで、まったく最後の最後まで自分の非を認めず、ご都合主義的な言葉しか口にできない軽薄さに唖然とした思いを、この記事が代弁している。言いたい思いをほぼ記事にしてくれているので、リンクを貼ることで今日のきままな日記としておこう。

そう言えばドナルド・キーン博士が生前、小澤征爾との対談形式でTV番組のなかで語った言葉のなかで、「日本というのは、本当に素晴らしい国です。ただし、日本は特別だ、日本人は特別だ、という気持ちさえなければ、日本は本当に素晴らしいのです」という、重要な留保を強調しておられたのが強く印象に残っている。

週刊朝日5月27日配信オンライン記事より。昨年7月の参院選で河井夫妻が地元広島の県議や市議、首長らに現金を配ったカネについて、広島の自民党地方議員の話しとして報じている。

記事によると、河井案里参院議員と衆院議員で夫の河井克行前法相の公職選挙法違反事件(買収)について、広島地検と東京地検特捜部が捜査を進めている模様。この問題に関しては、現金を受け取ったとして広島県安芸太田町の小坂真治町長が4月9日付けですでに辞職している(時事通信)。また、ウグイス嬢に違法な支出をしたとして秘書が逮捕されている。

今年一月に、本来二月で定年を迎える予定だった黒川弘務前東京高検検事長(5月22日に賭け麻雀問題で辞職)の異例の任期延長を閣議決定までして強引に推し進めた背景には、河井議員夫妻への捜査・立件の問題があることが伝えられている。「とりわけ怖いのが、自民党本部に検察の強制捜査が入ることだ」として自民党幹部の不安の声を伝えている。なにがそんなに怖いのだろうか。「政治と一定の距離保つべき」(黒川氏の後任の林真琴東京高検検事長、朝日新聞デジタル5月27日配信記事より)という言葉がすべてを語っているように思える。

新型コロナウィルスの発生源を巡って、武漢ウィルス研究所の石正麗氏によるコウモリ由来のウィルス研究がその発生源ではないかという疑義をワシントンポストが報じていることを、日本人の女性ジャーナリストの記事で知ったことは、ほぼひと月前の4月19日に当ブログ「Der Konflikt über die Fledermaus?」で、興味本位で取り上げた。もしこの指摘が事実であるとすれば中国の重大な責任問題であるし、そうでないとすれば米報道側による非常に無責任なフェイクニュースということになる。どちらが真実なのかわからない中、名指しされた当の石氏自身の動静が一向に伝えられず、一時はフランス経由で大量の証拠書類を持って米に亡命申請をしているという真偽不明の情報も流れ、それに対する石氏本人による反論も、ことの重大さに比してごくごく簡単な内容でしかなかったため、なにが真実なのか、まったく見当がつかない状態が続いていた。

確かにアメリカと言えば、イラクによるありもしない大量破壊兵器保有の情報をCIAがでっちあげて、それをもとにイラク戦争へと突き進んだ過去の歴史がある。CIAからの情報など、たいていはなんらかの裏があると考えるのは当然だろう。しかし一方の中国も独裁的強権国家なので、信頼できる情報がそうやすやすと出てくることも期待できないし、現に米側の指摘がもし正しかったとすると、中国のような国家のなかで石氏のような一研究者の立場の人間の身の安全も、非常に脆弱なものだと推察できる。彼女のようないち研究者からすれば突然身に降りかかった災難としか言うほかないだろうが、自分の意志に関わらず、米中の国家間の熾烈な情報戦の渦中のただ中に置かれたのではないだろうか(風刺画で言えば米中の綱引きの真ん中で両方から強引に引っぱられている状態)。スパイものやサスペンス映画としてはよくできた展開かもしれないが、本人としてはたまったものではないだろう。

ここに来て、ようやく近況がうかがい知れる動画がTVのインタビューで見られるようになった(TV朝日)。もちろん、米側のウィルス流出説を否定する内容だが、どちらにしても中国にいる以上は、そう主張する意外には考えられないだろう。そう言えば、(武漢研究所流出説について)途中まで数々の証拠を握っていると豪語していたポンペイオ氏が急にトーンダウンしたのも、石氏の真偽不明の亡命報道後の時期とタイミングが合っている。もしかしたら米側がカネで石氏を釣ろうとしていて、石氏はそれに釣られるように見せかけていて、実は最初から愛国者として米側を手玉にとっていたとしたら、なかなかの女傑ではないか。ちょっと陰謀小説の読みすぎか(笑)。

(追記:朝日新聞DIGITAL記事





なぜか BIGLOBE がニュースサイトで取り上げているが、埼玉県深谷市の公立中学校が、生徒の登校日に「アベノマスク」の着用を強要するプリントを配布していたことが話題となっている。その後、続報として(これまたなぜか)産経の記事を引用するかたちで、立憲民主党の川内博史衆院議員の記者会見でこの件を取り上げていることを報じている。(追記:毎日新聞記事


これはつい昨日(5月24日)のできごとで、夜なにげなくツイッターであれこれ見ていると、元文科省の高官だった前川喜平氏が自身のツイッターで、その学校の生徒の保護者か関係者と思われる一般のかたのツイートを取り上げられているのを目にした。「しかし、これ本当かな?」といちおうの保留は付けながらも、「これが本当なら校長は糾弾されるべきだ。合理性を説明できないルールを作ってはならない。」として @mamazakimamaさんという方のツイートを取り上げていた。それには学校が作成したプリントと思われる資料の一部が写真添付され、そこには生徒の登校日に「アベノマスク」を着用の確認と、「個別指導」の項目には「アベノマスク(着用もしくは持参)を忘れた生徒は少人数教室に残る」と記されており、政府が配布している布マスクの着用を強要しているように読める内容となっていた。

緊急事態宣言が解除されることになるとは言え、新型コロナウィルス感染の脅威がいまだ消滅したわけではないこの時期に、登校日にマスクの着用を義務付けるのは当たり前のことだが、選りによって布製ですきまが多く、感染防止対策としては一般の不織布製のサージカルマスクよりもはるかに性能が劣るアベノマスクの着用を生徒に強要するとは、いったいどういう神経の校長なのか?生徒の身の安全よりもお国や安倍様への忠誠のほうが大事なのか?いったい、どれだけ時代錯誤で不見識な教育者なのか?一目見て、そうした問題提起を孕む内容であることは伝わってきた。翌日の今日5月25日になって、冒頭に記したように一部ではこのことが伝えられるようになったが、より問題点が大きくなってきたのは、なぜか原ツイートで問題提起をした@mamazakimamaさんという方のアカウントが凍結されて、現在見れない状態となっていることである。これはおかしいでしょ?!ツイッター・ジャパンって、本当に信用ならないな。現状を告発した一般人のアカウントを凍結って、どれだけ権力者サイドにだけ都合のいい道具に落ちぶれているのか。

(5月29日追記:@mamazakimamaさんのアカウントは凍結状態がまる3日続いた後、5月28日になって凍結解除になっているようで、多くの方からの励ましのコメントを受けておられるようだ。とは言え後日談を見ると、学校側の対応は「誤解を招く表現だった」という言い訳が象徴しているように、問題点は撤回しておらず生徒側目線で真摯に向き合っているようには到底思えない。)


(週刊朝日5月15日オンライン記事)
アベノマスクの国内製造業者が激白「売っているサージカルマスクの方が安くて性能いい」

毎日新聞は同社の世論調査で安倍内閣の支持率が27%に急落し、不支持率が64%となったと、今日付けのオンライン記事で報じた。

いっぽう 週刊朝日オンライン記事 は、今年1月に閣議決定で定年延長を決めた黒川弘務東京高検検事長の辞職問題と、河井克行前法相夫妻の公選法違反容疑での捜査・立件に向けての見通しを報じている。


普段は音楽や書籍、ドキュメンタリー番組などの感想を綴ることが多い当ブログだが、さすがにこの2月以降は新型コロナウィルスについて書き留めることが多くなった。京都・大阪を含む都市部で外出や営業の自粛を要請する緊急事態宣言が実施されたのが4月7日で、それが全国各県に拡大されたのが4月15日。まる一か月の自粛期間を経て、後者のうちの多くの県では、5月15日から自粛要請が解除され、今日5月18日現在、前者の東京・大阪・京都などの都市部を含む特別警戒地域ではいまだ解除には至っていないが、東京を除いては概ね5月21日をもって自粛要請の解除の見通しであることが報じられている。拙速な自粛要請の解除で再び感染者の再拡大になってしまっては元も子もないが、いつまでも自粛のままでは生活が成り立たないのも現実だ。仕事も、いきなりもとのペースには戻らず、徐々に取り戻してなんとか続けて行ければ、というところだ。

この一か月間、せっかく辛抱してあちこちに出歩いたり飲食店で食事することも控えてきたりしたのだから、これによって学習した感染予防策をこれからの生活に活用して行きながら、最大限予防に努めていくほかない。屋内外を問わず他人とはある程度、一定の距離をキープすることを心掛け、至近距離での大声での会話も控えざるを得ない。マスク、うがい、手洗いはすっかり習慣になったが、今後暑くなってくるとマスクもちょっと暑苦しく感じるかもしれない。それとなによりも、月に何回か行っていたスポーツジムのウォーキングマシーンで汗をかいたり、プールでリフレッシュというのは、感染が完全に下火になるか、ワクチンが行きわたるかするまでは、当分その気にはなれない。経営的には大変困難な時期だろうが、なんとか持ちこたえてほしいものだ。

育ち盛りや小さな子供がいる家庭では、ひとくちにステイホームとは言っても、そう楽なことでもなかっただろう。おまけにテレワークで中途半端に拘束状態でもあれば、ストレスも増えたことだろう。この後、その反動で再び感染拡大にならないことを祈るほかない。翻って、自分自身のステイホームのこの一か月は、これを機にもう、家の隅から隅まで掃除をしまくったひと月で、あまりストレスも感じることもなく過ぎて行った。サッシの隙間の掃除は言うに及ばず、網戸の張り替え、手すりやドアノブ、各種機器のスイッチまわりの徹底消毒、玄関土間の洗浄と靴底の消毒、浴室のカビ掃除とファンの掃除、分厚くスラッジがこびりついた台所換気扇ファンの掃除、そして3年半ぶりのフローリング床のワックス掛け(ワックス掛けの前のワックス落としと水拭きがなかなかの手間仕事なのだ)等々、普段の掃除ではそこまでは出来ない仕事をこれを機に済ませておく、いいタイミングになった。床のワックス以外はどれも一見、家人も見ただけではやってもやらなくてもわからないものばかりだが、まぁ、何年かに一度、やるかやらないかでは家の持ちにも影響が出て来るだろう。大型連休にどこにも行かずに自宅ばかりで過ごしたのは流石に今年がはじめてだろうか。もちろん、近所の公園へのちょっとした散歩やスーパーの買い物ていどの外出はしたけれど、結局まるひと月、市外へ出なかったのははじめてかも知れない。

3月のびわ湖ホールの「指環」の仕上げとなるはずだった「神々の黄昏」と、6月の東京でのザルツブルク復活祭音楽祭とドレスデン・ゼンパーオーパーとの提携公演となるはずだった「ニュルンベルクのマイスタージンガー」と言うワーグナーの大作2本がいずれも中止になってしまってこころにポッカリと穴が空いてしまい、自室にこもって音楽を聴く気力がすっかり失せてしまった。こんなに時間はたっぷりとあったのに、これだけCDで音楽を聴く時間が少なかったのも珍しい。本は1冊、去年の冬に読みはじめて、読む時間がなくて途中で止まったままになっていた猪瀬直樹の「昭和16年夏の敗戦」をようやく読了した。これを読むと、戦後70年を経ても、日本と日本人の芯の部分はなにひとつ変わってはいないんだと言うことを、現政権の末期的症状を目の当たりにするにつけ感じざるを得ない。

今年の夏はたまたまザルツブルクにもバイロイトにも行く計画がなかったのは、不思議に奇遇なことである。ザルツブルクは音楽祭設立100周年のアニバーサリーイヤーだったし、バイロイトも「指環」新制作のプレミエイヤーになるはずの年だった。もし行く計画でいたとしたら、いまごろはすっかり意気消沈していたことだろう。まぁ、いまはコロナを生き延びて、次の機会が訪れることを気長に待つこととしよう。

すでに各メディアで報じられている通り、日本のプロスポーツ界からも新型コロナウィルス感染による死者が出た。時事によると、山梨県出身高田川部屋の力士の勝武士さん。まだ28歳の若手力士である。私自身は相撲にはまったく関心が無いので、角界のことは全然知らないし名前を聞くのもはじめてなのだが、28歳という前途のある若い力士が感染し、約ひと月の間苦しんだ末に亡くなられたことを思うと、見ず知らずの他人ながら、思わず涙がこぼれてしまった。まったく憎むべきはウィルスで、これは不可抗力には違いないが、その後のこれだけの感染拡大は無為無策と言うよりもむしろ、有害な判断が招いた人災ではないか。少なくとも、この3か月間で亡くなった650人以上の方の何割かは、当初からPCR検査が徹底され、保健所で放置状態、病院をたらいまわしにされるということがなければ、命までは奪われることはなかったのではないか。


そうしたなか、今日5月13日の段階では、5月末まで延長としていた感染拡大防止のための緊急事態宣言の時期を、一部地域からは5月14日までに切り上げる方向と報じられている。ただし大都市周辺の特別警戒地域は対象外とのことで、これは当然のことだろう。だいたい、5月に入った頃から、欧州各地や韓国などのロックダウンがようやく解除という報道が目立ちはじめ、それに誘発される形で日本も早く外出自粛を終わらせないと経済がもたないと言う声も強くなっているように報じられている。だが、ちょっと待て。日本で緊急事態宣言が大都市部に発令されたのが4月7日で、全国では4月16日からである。翻って、いまようやくロックダウン解除が報じられている欧州各地は、それよりもひと月早い3月初旬(イタリアで3月9日から、フランスで3月17日から、ベルリンで3月16日から、等)から、日本よりもより厳しい外出禁止措置が取られていたことを、もうすでに忘れてしまっているのではないか?ひと月まるまる遅れでようやく緩やかな外出自粛期間に入った日本が、欧州の規制解除の動きと同じようにできるはずがない。拙速に解除のみが優先されてしまうと、規制解除後のソウルのクラブで数日前に多数の感染者が再発生したのと同じように、それみたことかと言わんばかりに再び感染者が各地で多数発生してもおかしくはない。何日か前に、かかりつけの医者の先生とも少しばかりコロナ関連の会話をしたが、今回のウィルスの感染力は侮れないし、相当慎重に対応しても、長期戦になるのは間違いないだろうと仰っていた。相当早くワクチンが開発はされても、全国各地に問題なく普及するまでにはかなりの時間を要するだろう。暮らしと経済に制約がかかるのは最小限に抑えたいのはやまやまだが、経済優先に前のめりなメディアの姿勢は、新型コロナウィルスの怖さをまだまだじゅうぶんに伝えきれていないように思えてならない。プロ・アマ問わずスポーツ選手にも気の毒だが、しばらくのあいだは相撲やレスリング、ボクシング、柔道、剣道のような、対戦相手と密着したり大声をかけ合ったりする競技は、相当慎重にならざるを得ないだろう。

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前記事で懸念事項として書いていた通り、連休明けの今日5月8日金曜日、東京文化会館と新国立劇場、兵庫県立芸術文化センターで上演予定だった大野和士指揮、イェンス=ダニエル・ヘルツォグ演出、東京都交響楽団演奏による「ニュルンベルクのマイスタージンガー」(最新プロダクション)の上演中止が公式サイトで発表された。東京文化会館からは午後3時過ぎにメールで連絡が来ていた。それによると、いったん全公演を中止し、チケット代金は払い戻される。そのうえで公演自体は来2021年度に調整し直し、改めてチケット発売のうえ、上演の予定とのこと。詳細は後日発表予定。以下は東京文化会館メールマガジンの案内文の一部内容。


6月14日(日)・17日(水)に予定しておりました「オペラ夏の祭典2019-20 Japan⇔Tokyo⇔World『ニュルンベルクのマイスタージンガー』」は新型コロナウイルス感染症の影響により、海外からのキャスト・スタッフの来日やリハーサル環境確保の目処が立たないこと等から、当初の日程での開催は困難であると判断し、中止することといたしました。 なお、本公演につきましては、2021年度での開催を検討しております。詳細は決まり次第、オペラ夏の祭典2019-20 Japan⇔Tokyo⇔World公式サイト等でお知らせいたします。 https://opera-festival.com/ ご購入いただいたチケットにつきましては、代金の払戻しをさせていただきます。(チケットの振替はございません。)


東京文化会館公式サイト

→オペラ夏の祭典2019-2020公式サイト


あ"~(涙)! 3月のびわ湖ホール「神々の黄昏」に続けて、今回もいい席取れてたのにぃ!これで、今年もっとも楽しみにしていたワーグナーの選りによって大作二作が、新型コロナウィルスのために飛んでしまった。残念!

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今日5月4日、新型コロナウィルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が5月末まで延長されることが、正式に発表された。この数か月で世界中であっという間に感染拡大が広がり、多数の死者や社会的・経済的にも計り知れない甚大な影響が出た。未知のウィルスが相手とあっては、こればかりはどうしようもない。いや、むしろ日本は初期の対応を完全に誤ったために、これから世界の二か月遅れで感染流行のピークを迎えることになることを思うと、5月いっぱいは外出の自粛を続けて感染拡大防止に努めることは、残された選択肢としては当然のことだろう。しかし、固定費のかかる事業や商売に携わる方からすれば死活問題でもあるので、並行して賃料や諸税の猶予は言うに及ばず、場合によっては減免や損失補償も並行して行政の課題として取り組まなければ大変なことになる。なので、仮にまことに運よく5月いっぱいで期待通りに感染拡大を抑えこむことに成功できたとしても、そこからの社会の立て直しというのは、大変な努力と根気が必要になって来るだろう。経済の動きが再スタートすれば、当然ながらスポーツや文化・芸術活動の再開が望まれることも理解できる。たぶん、再開可能な方法と範囲で、手探りの暗中模索で進めて行くほかないと思う。しかしながら、6月の東京での「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を予定通り開催するには、ちょっともう、いろんな意味で難しい段階に来ているのではなか、と思うのだが、どうなるのだろうか。

緊急事態宣言の延長が発表された今夜の段階で、主催者からは特段の連絡はまだ届いていないし、公式HPやツイッターでも、特段のニュース・リリースはされていない。外出自粛ムードが5月いっぱいで明ければ、6月中旬の「マイスタージンガー」はぎりぎり開催できると踏んでいるのだろうか?どうだろうか?もちろん、自分自身としても可能であるのなら予定通りに鑑賞できるに越したことはない。今回も、発売初日に張り切ってチケットを購入したので、大変よい席も確保できている。しかしながら、その自分でも、今回ばかりはすべてにおいて段取りが難しいのではないかと想像する。合唱も歌手もオケも大規模で、3幕の上演時間5時間を超す「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のようなワーグナーの大作を上演するにあたり、その直前の4月、5月にまともにリハーサルすらできていない状況で、かつセットと演出がドレスデンから移し替える大規模なものであることを考えると、6月に入って2週間ですべて万端整えるというのは、さすがに無理があるのではないだろうか。第一、航空機の運航が止まっている現状のままでは、主役級の歌手たちはもちろん、主要なスタッフの入国や各種資材の搬入すら難しい状況ではないのか?なによりも主役級の歌手はもちろん、スケールの大きい合唱が聴きもののこの作品で、合唱がコロナ感染リスクのために本領が発揮できないとなれば、魅力も半減する。相手は目に見えない未知のウィルスであって、それなのにろくな検査もできないし、感染の第二波も否定できない、とかいう状況のなかで、こころから楽しめる状態になっているだろうか?

それよりなによりも、ワーグナー畢竟の大作と言うべきこの作品の祝祭的特質を思うと、いまの状況で、これを鑑賞する気分になれるかどうかである。3 - 5 月の3か月の経済状況は未曽有の壊滅状態であることは明らかだ。多数の感染者や犠牲者も出続けている。そんななかで、このような晴れがましい性格の大作オペラを鑑賞できる心理的なゆとりが、6月の時点で、今まで通りにあるだろか。運よく予定通り開催されて鑑賞できたとしても、こころから堪能できるだろうか。もともと2020 TOKYO オリンピックに合わせての企画でもある。そのオリンピック自体が延期になっている。しかし、オペラの場合は、延期で仕切り直しというのは実際には難しい。予定通りに上演できなければ、それは中止以外にはありえないだろう。それはそれで残念なことには違いない。特に、自分の場合は去年5月のザルツブルクでのプロダクション・プレミエを現地で鑑賞しているだけに、今回そのプロダクションが再度東京で観れるということで、大いに期待をしていた(いや現時点では過去形でなく期待「している」が正しい)。主役級の歌手の顔ぶれは異なるが、この面白い演出をもう一度観ることが出来るのは楽しみである。

それだけに、間際になるまで上演の可否についてなんのアナウンスもないとすると、相当はらはらとさせられる。今年はすでに3月にびわ湖ホールでの「神々の黄昏」で無観客上演の憂き目に合っている。これで「マイスタージンガー」までもそういうことになると、もう嘆きの言葉すら出ない。やるならやる、やらないなら、やらない。なんやもう、じゃらじゃら、じゃらじゃら言うてんと、今日という今日はもう、はっきり言うといで、となぜか松嶋屋の秀太郎はんの封印切りのおえんさんの気分になってしまうのである。もう、憎しや憎し、新型コロナなのである。



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