銀座の晴海通りと並木通りが交わる一等地で長らく営業してきた「TEIJIN MEN'S SHOP 銀座本店」が、この3月28日に閉店し、60年の歴史に幕を閉じるという記事が報じられている。系列も含め、他の店舗も営業を終了すると報じられている(下記リンク記事)。昨2020年7月には創業200年以上を誇る米「Brooks Brothers」も連邦破産法11章を申請し経営破綻したことが報じられ、コロナ禍以降のライフスタイルの変化や景気の急激な悪化がこうした服飾業界にも影響を与えていることが感じられる。同年8月には「J-PRESS」や「23区」などのブランドを展開するオンワード樫山が多数の店舗の営業を終了することも報じられていた。すこし前の2015年頃には英バーバリーが日本でのライセンスパートナーだった三陽商会との契約を更新しなかったあたりから、日本マーケットの斜陽化が顕在化してきていたのだろうか。経済が斜陽化すると、それに比例して社会が右傾化するという指摘を目にすると、英バーバリーは日本と言うマーケットの政治と経済の状況も冷静に観察していたのだろうか、というのはうがった推測。
学生だった70年代後半から80年代の中頃にかけて、こうしたブランドの衣料はデザイン性や品質もよく、価格は決して廉価なわけではないが、アルバイトでがんばれば学生でも手が届く範囲内で、広く人気があった。90年代はじめに一時東京にいた頃には、上記のテイメン銀座本店には何度か訪れた。若かったので、スーツなんかはまだ手が出せなかったが、シャツやネクタイを買って TEIJIN MEN'S SHOP のロゴ入りの白い紙袋に入れて持ち帰る時は気分が躍ったものだ。そう言えば、一本15,000円もする英FOX製の雨傘を購入したこともあった。しっかりとした縫製と撥水のよく効いた布地に、風格あるマホガニー製のハンドル部分、なによりも焼き入れで強度を増した傘の骨(芯)部分はちょっとした強風程度ではびくともせず、この傘があるだけで雨の日が楽しみになったものだ。買ってまだ1年くらいの頃に、会社近くのパン屋で買い物をするために入口の傘立てに置いたほんの10分程度のすきに、よく似た色の安物の普通の傘にすり替えられてしまっていた。時すでに遅く、周囲にそれらしき傘をもつ姿は見当たらなかった。懲りずに今度はブルックスブラザーズでやはり同程度の英FOX製の傘を買った。やはり1年ちょっとで、今度は酔っていてタクシーに置き忘れた。そんな時に限ってレシートを貰ってなかった。それ以来、傘はずっとビニール傘である。そんな若かりし頃の記憶が、よみがえった。