当ブログへのアクセスの記録を見ていると、ここ数日なぜか二年前にアップしたワーグナーのパロディ演奏のCDを紹介したページへのアクセスが急に増えていて驚いている。なにがあったんだろうか?ワーグナーのパロディ演奏に関心がある人など、そう多くはいないようには思えるのだが。最近になって、どこかでこのCDが紹介されたんだろうか?よくはわからないのだが、せっかくなので以下にまるごとその記事をペタリ。以下は2019年9月16日に「笑える(でも結構本格的)ワーグナーのパロディ演奏CD」としてアップしたものの再掲。

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これは、ひと月ほど前に、熱狂的なワーグナー・ファンの 
"スケルツォ倶楽部" 発起人 さんのブログで取り上げておられたのを拝見して、なんだか面白そうなので調べていると、amazon のサイトでアルバムごとダウンロードが出来るようだったので、さっそくDL購入して聴いてみた。結果、"スケルツォ倶楽部" 発起人 さんがすでに詳しくご紹介いただいているように、基本的にはワーグナーのパロディ演奏と言える企画もののCDながら、演奏しているのは歴としたバイロイト祝祭音楽祭のピットで演奏している実際の楽団員有志によるものであり、非常に面白い内容の演奏でありながらも、本格的なのである。せっかくなのでCDでも注文していたものが、先日海外から届いていた。なので、本日の記事の内容は、完全に"スケルツォ倶楽部" 発起人 さんの後追いであり、文字通り、受け売りである。せっかくの面白い演奏のCDなんだから、どなたかがすでにお書きの内容だからと言って取り上げないでいたらフィールドもひろがらないし、第一もったいない。演奏曲目や、その内容などについては、すでに "スケルツォ倶楽部" 発起人 さんが上記リンクのブログで大変詳細に説明しておられるので、ご参照を。

一応、CDのタイトルだけ触れておくと、"Bayreuther Schmunzel-Wagner" と言うことになっていて、"スケルツォ倶楽部" 発起人 さんは「バイロイト風、爆笑ワーグナー」として取り上げておられる。うまい訳しかただと感心したが、ここでは「バイロイト風 笑えるワーグナー演奏集」と言うことにしておこう。CONCERTO BAYREUTH というレーベルのCDでニュルンベルクの Media Arte から2014年6月にリリースされている。曲の一部にもの凄いテープの伸びによる音の歪みがあったり、解説に "West Germany" という記載があったりするので、もともとのレコードはかなり古い録音だと思われるが、録音日などの詳しいデータは記載されていない。ただし、実質的なリーダーであるシュトゥットゥガルト州立歌劇場楽団員(録音当時)であるアルテュール・クリング(Vn,arrange)をはじめ録音参加者の氏名と所属オケ(録音当時)は記載されていて、それによるとクリングと同じシュトゥットゥガルト州立歌劇場の団員がもっとも多い。一曲目のモーツァルトの「アイネクライネナハトムジーク」とワーグナーの各曲のモティーフをかけ合わせた "Eine kleine  Bayreuther Nachtmusik" はクリング編曲による弦楽合奏で、奏者は15人。聴きなれたモーツァルトの「アイネ~」の典雅な演奏が突然「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のハンス・ザックスの靴叩きの音楽に切り替わったり、「トリスタンとイゾルデ」のマルケ王の音楽に混線したかと思うと、もとのモーツァルトに何事もなく戻ったりで、面白いけれども、演奏もとても本格的で言うことなしだ。他の曲で多人数の演奏では、フルート2、オーボエ1、クラリネット3、ファゴット4、トランペット3、ホルン(ワーグナー・テューバ)8、トロンボーン4、テューバ1、打楽器2が加わり、総勢36名による演奏(2,3,4,7,8,9,11)。オケの面々はシュトゥットゥガルト州立歌劇場のほかには、デュッセルドルフ響、ミュンヘンフィル、バイエルン放送響、NDRハンブルク響、ハンブルクフィル、ベルリン・ドイチュオーパ、ベルリン放送響、フランクフルト放送響、キールフィル、マンハイム、ヴィースバーデン、ハノーファー、ダルムシュタット、ザールブリュッケン、それにベルリンフィルからと、じつに多彩だ。フォーレ③やシャブリエ⑦のカドリーユなんかは「冗談音楽」そのものと言った印象だが、やはりワーグナーの各曲のモティーフが散りばめられていて、くすりと笑える。ドヴォルザーク(クリング編曲)④ラルゲットなどは、室内楽として聴いても美しい曲。クリング自身の作曲による "Siegfried Waltzer"⑨は、ウィーン風のワルツのなかに「ジークフリート」のモティーフが散りばめられていて秀逸。ミーメのトホホの嘆き声も聴こえてきそう。ヨハン・シュトラウス風のピツィカート・ポルカのワーグナー風パロディ⑧もあったりで、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートなんかで告知無しで演奏したら、案外だれも気付かなかったりして(…な訳ない、笑)。

ダウンロードだけでなく、CDも取り寄せてみたのは、合唱も入った "Wir sint von Kopf bis Fuss auf Wagner eingestellt"(われら全身ワーグナーに包まれて)⑤の歌詞の内容が知りたくて、ひょっとしたらリーフレットに掲載されていないかと期待したのだが、残念ながら掲載されていなかった。続く "Tanny and Lissy"(ユリウス・アズベック作曲・ピアノ)⑥ も声楽入りで、こちらは「タンホイザー」のジャズ風というかカバレット・ソング風のパロディで、タンホイザーが "Tanny" で、エリザベートが "Lissy" と言うことで、ジャズとは言ってもそこはドイツ、どことなくクルト・ワイル風の趣で、これも歌詞内容を確認したかった。この夏はちょっとリスニングルームでじっくりと聴く時間が少なかったのだが、夏の終わりに面白い新発見があって一興だった。


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