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7月10日(日)午後2時開演
京都コンサートホール 大ホール

R・シューマン : ゲノヴェーヴァ序曲
J.ブラームス  : ドイツ・レクイエム
(休憩なし)

指揮/角田鋼亮 管弦楽/京都市交響楽団
ソプラノ/石橋栄実   バリトン/大沼徹
合唱/京都ミューズ・ドイツレクイエム合唱団
合唱指導/大谷圭介

ひさしぶりに京都コンサートホールに出かけて、京響の「ドイツ・レクイエム」を聴いてきた。

角田鋼亮(つのだこうすけ)の指揮でははじめて聴く。1980年生まれとあるから、現在42歳前後か。プロフィールを見ると東京芸大大学院とベルリン音楽大学で学び、ドイツ大学指揮コンクールで上位入賞後、日本では各地のオーケストラに招かれ、現在はとくに愛知や仙台を中心に活躍中であるとのこと。躍進中の若手指揮者として期待されている人材のようだ。奇を衒わない端正な指揮で、音楽をていねいにまとめ上げていた。

合唱の京都ミューズ・ドイツレクイエム合唱団というのは、今回のコンサートのために結成されたアマチュアの団体で、約140人規模の合唱。男性も女性もみな首元に見慣れない小型のヘッドホンのようなものを着けているので何かなと思ったが、終演後にスタッフに訊ねると、飛沫飛散防止の器具とのこと。なるほど。運営の京都ミューズではいままでに「第九」やヴェルディ「レクイエム」、オルフ「カルミナ・ブラーナ」などに取り組んで来ており、結成50周年となる今年は更なる飛躍を目指して大作の「ドイツレクイエム」に挑んだとのこと。アマチュアとは言え、しっかりと聴きごたえのある合唱だった。特に第2曲の力強い部分などは本格的だった。

ソプラノとバリトンのソロは、まあまあのように感じた。これはまあ、少々自分の期待値が高かっただけかもしれない。京響の演奏は、ゲストコンマスの石田泰尚氏のリードにより、安定した演奏が聴けた。今回特に印象に強く残ったのは、オルガンの迫力が結構大きかったこと。以前2014年にウィーンの楽友協会でブロムシュテットの指揮、ウィーン響の演奏で同曲を聴いたが、その時もオルガンはあるのはわかったが、今回ほどその存在感を強く感じるほどの演奏ではなかった。今まで聴いてきた数種類の同曲のCDでも、オルガンの存在をそれほど強くは感じたものではなかった。この曲って、こんなにオルガンの存在感がある曲だったっけ?今回は京都コンサートホールにせっかく設置されている立派なオルガンの見せ場、聴かせ場をかなり意識した演奏となっていたのではないだろうか。正面のオルガンのシャッターが開くと同時に、コントラバスをより補強するような、迫力のある低音がホール内に深々と響く。この感覚は、以前ライプツィヒのゲヴァントハウスのホールで聴いたR.シュトラウスの「祝典前奏曲」のオルガンの冒頭部分を思い出させる。もっとも、そこまでオルガンだけのソロというわけでは、もちろんないけれども。このホールのオルガンであれば、たまにはオルガンコンサートを聴きに来るのも悪くないな、と思った。

ところで一曲目のシューマン「ゲノヴェーヴァ序曲」というのは初めて知ったし、聴いたのも初めてだが、実はシューマンが一曲だけ書いたオペラの序曲だったらしい。1848年に完成し初演されたが、散々な評価だったらしく、その後シューマンがオペラを作曲することはなかったと言う。その後もこのオペラが上演される機会は滅多にないが、序曲だけは単独で演奏されることが多いらしい。暗く陰鬱な曲の開始からホルンによる森の描写など、一聴してシューマンらしいロマンティックな雰囲気が伝わってくる佳曲だった。