ライン川沿いの小さな街ザンクト・ゴアールから私鉄MRBでビンゲンまで23分で戻り、ビンゲンからはICの列車でハイデルベルク中央駅まで70分。正午過ぎにハイデルベルク中央駅に到着し、一日乗車券を購入し、市電でビスマルク広場へ。そこから歩いて7,8分で今日のホテル、オイロペシャー・ホーフ・ハイデルベルクへ。このホテルも独立系の家族経営のホテルだが、150年の伝統と格式を誇る名門ホテル。
チェックインにはまだまだ早い時間ではあったが、受付けのスタッフは笑顔で迎えてくれ、さっそく部屋の鍵を渡してくれた。今風のカードキーとは程遠いズッシリとした鍵で、その上にまだ松ぼっくり大の真鍮製の錘まで付いている。部屋は最上階の4階で、スパエリアが近いのが有難かった。部屋の大きな窓を開けると、きれいな中庭と向こうに新緑が爽やかな山の景色が見える。何よりも、部屋は広くて天井高もゆとりがあり、インテリアもヨーロピアン調で美しい。クラシックな雰囲気ではあるが、全体的にとても明るい印象で、夜になって照明を点けると、またその高級感のある明るさに、心地よさを感じた。バスルームも洗面台が二つとゆったりとしていて、明るくてきれいだ。ただ、浴槽にお湯を溜めるときは、少々時間がかかった。
このホテルの立地は、観光地の旧市街からは1キロ程度離れていて、バスで3ストップほどの距離。歩けなくはない距離ではあるが、少々疲れるし時間もかかるので、バスで行き来するほうが楽だ。なので、旧市街を観光するには、やや不向きかもしれない。そのぶん、目の前は大学と公園の緑が豊かで、騒々しくないので、ゆったりとホテル内で寛ぐには快適なホテルだ。大きな都市で5つ星クラスのクラシック・ホテルに泊まることはまれだが、ハイデルベルクと言う場所柄、大都市のそれらのレートから比べると若干のお得感がある価格だ。プールサイドのバーのカウンターにこのホテルのオリジナルの豪華な書籍が誇らしげに置いてあり、見開きにはリヒャルト・シュトラウスやヴィーラント・ワーグナーらの著名人の宿泊者らのサインが印刷されていた。ヴィーラント・ワーグナーのサインがあるのに、元祖リヒャルト・ワーグナーのサインがないと言うことは、元祖ワーグナーはハイデルベルクには泊まらなかったのか?
ハイデルベルクの旧市街そのものは、ヨーロッパでも古い伝統のある大学やハイデルベルク城などがあって、歴史を感じさせる雰囲気のある街だが、ごく小さな街で、あちこちと歩きまわるほどの規模ではない。ネッカー川にかかる古い橋から見るハイデルベルク城は、日中に見る時と黄昏に見る時とで、また違った趣きがあって、美しい古都を象徴する風景だった。
翌朝10時すぎの市電でマンハイムに戻り、そこからまた特急のICEで30分ほどで、フランクフルト空港駅へ11時過ぎに到着。午後発の帰国便には、十分に間に合う距離と時間だった。